JOY ROOM SPECIAL CONTENTS

女性のココロとカラダの基礎知識

Dr.宋美玄の数字から見る!働く女性のヘルスケア事情

LESSON 1今、健康経営に欠かせない「女性の健康」

日本の将来を考える上では、女性の健康への配慮は不可欠―。
第1回は、女性の健康増進が社会にもたらす経済的な影響を見ていきましょう。

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女性特有の疾患を抱える働く女性の医療費支出と生産性損失額は合計6.37兆円

婦人科系疾患を抱える働く女性の年間経済損失

調査によると、女性の就業者人口(64歳以下)は2,474万人(※1)。働く女性における月経周辺症状の有病率は17.1%とされています(※2)。医療費支出は、1人当たりに直すと年間33.5万円と算出され、働く女性全体の医療費支出総額は1.42兆円と推計されました。
また、生産性損失について、婦人科系疾患をもつ人の平均の総労働損失(%)は32.1%と推計。女性の平均賃金は年間364.2万円(※3)。
この数値と働く女性の推計人数2,474万人×有病率17.1%、総労働損失32.1%を乗じると、総額は4.95兆円と推計。医療費支出と生産性損失を合わせると、全体の損失額は6.37兆円と推計されました。

※1 総務省「労働力調査」(平成27年)
※2 (Nohara2011)
※3 厚生労働省「賃金行動基本統計調査 女性の平均賃金」(平成26年)

解説!数字で見ると、女性特有の不調のケアが重要であることがよく分かる!

皆さんは、こんな状況にありませんか?

  • 月経にまつわるトラブルを「いつものことだから仕方ない」と放置する…。
  • 早期発見すれば軽症で済む可能性が高い疾患の検査を「仕事が忙しくてムリ」、「今元気だから必要ない」と受診しない…。
  • 具合の悪そうな女性従業員を管理職がどう扱っていいか分からず、結局ケアできていない…。

こうした「よくある」ことへの対策が不十分なことが、国全体で見ると大きな金額の社会経済ロスを招いているのです。

例えば生理痛もPMS(月経前症候群)にも個人差があります。同じように困っていると「つらいよね」と共感できますが、女性でも症状が重くない人もいたり、ましてや男性ではつらさは理解できなかったり…。
だから、数値で表すことは非常に重要な視点。“女性特有の疾患がどれだけパフォーマンスに影響を与えるか”ということに、気づきやすくなるでしょう。
女性のヘルスケア対策は単なる福利厚生ではなく、今後の成長戦略になることは、数値からも明らかです。

健康経営推進企業の今後の関心は「女性の健康対策」!

「健康経営」の取り組みで関心が高いものは?

健康経営に関する調査によると、健康経営の取り組みで関心が高いものの1位は「女性特有の健康問題対策」(※1)。
一方、「女性の健康支援関連の取り組み」のサポートや配慮についての実施状況は、「生理休暇」でも2割程度、「がん検診や妊婦検診のサポート」で1割前後。「女性特有の健康課題の取り組み(リテラシーの向上や相談窓口の提供等)」についての整備状況や認知度は、数%程度と低いことが分かりました(※2)。

※1 出典 健康経営に関する実務者連絡会(*)参加者アンケート
※2 出典 経済産業省「働く女性の健康推進に関する実態調査」2018

勤務先での女性健康支援関連の取り組み状況

解説!企業が「女性の健康」に関心を持ち始めたことは、良い流れ

今まで女性は、定期的に訪れる月経関連の不調にも、素知らぬ顔をして働かざるを得なかったわけです。
しかし、政府で女性の活躍推進を成長戦略の一つとして掲げる中、健康経営の質をさらに高めるためには、「女性の健康対策」を企業も重要視し始めていることが分かるデータです。

まだまだ多くの課題はありますが、こうした課題も含め「女性の健康対策」について国や企業で関心を持たれること自体が、これまでになかった良い流れになっているといえるでしょう。

女性活躍推進の健康課題を考える

月経の仕組みについての知識がある
子宮や卵巣の病気についての知識がある

女性自身の知識不足や意識も課題として挙げられます。働く女性の約3割は「月経のしくみ」についての知識がなく、約6割は「子宮や卵巣の病気」についての知識がない、という結果が出ています(※1)。また、4割以上で女性特有の健康課題により職場で何かを諦めたことがあるとしています(※2)。
管理職が会社に求める女性従業員の健康サポートの1位は「産業医や婦人科医、カウンセラー、アドバイザーなど専門家への相談窓口」という結果も出ています(※2)

※1 出典 日本医療政策機構「働く女性の健康増進に関する調査」(2018)
※2 出典 経済産業省「働く女性の健康推進に関する実態調査」2018

女性特有の健康課題等により職場で何かを諦めなくてはならないと感じた事がある
【管理職】女性特有の健康課題を持つ女性従業員への対応で、職場で必要を感じたものは?

解説!「女性の健康対策」どこから手をつける??

実際、男性からも「男性には分からない女性特有の症状に的確にアドバイスできない」、「妊娠をすると周囲が『無理させられない』と感じ、どう扱ってよいか分からない」いう声を耳にします。

個人情報の取り扱いが敏感になるご時世では、上司だからといって人の健康に干渉するのはどうか?と気が引けることもあるでしょう。社内に健康相談窓口や保健師、産業医への相談などの制度があれば、それを薦めることが第一歩になると思いますが、“相談していることを社内に知られたくない”という人もいるかもしれません。センシティブな問題なだけあって、利害関係なく気軽に相談できるサポートを用意することも一案です。

そうした相談窓口を設けたり、不調を一人で抱え込まないと呼びかけたりすることが、女性自身の知識不足や意識の問題をサポートすることにもつながり、結果的に健康経営の軸となる“パフォーマンス向上”につながっていくことでしょう。

監修
丸の内の森レディースクリニック 院長/医学博士
株式会社WOMENS`HEALTH 代表取締役
宋 美玄(ソン ミヒョン)